インパクトのあるタイトルに惹かれ、読んでみました。
非行少年にフォーカスしているものの、本書の主張自体は子供を持つ親や教師等、子供に関わる全ての大人が読むべき一冊だと感じました。
印象に残ったポイントに絞って紹介したいと思います。
基本情報
発売日:2019年7月12日
ページ数:192ページ
出版社:新潮社
著者:宮口幸治さん
宮口幸治
立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、二〇一六年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主催。医学博士、臨床心理士。
引用Amazon
児童精神科医として多くの非行少年と対峙し、見えてきた側面を本書で語っています。
普段このような話題に触れることはほぼ無いので、この本を読むことで社会の見えざる部分、自分が知らなかった真実を知ることができるでしょう。
まさにFACTFULNESSです。
非行に走る真因
世の中では信じられないくらい残虐な事件が発生します。特に少年少女が事件を起こすケースが多くあり、彼ら彼女らの非行の裏にはなにが隠されているのでしょうか。
多くの人がまず考えるのは育ってきた環境を原因として挙げるでしょう。
しかし実は「認知機能の欠如」が関係しており、周囲の大人がそのシグナルをしっかりキャッチしてあげる必要があるのです。
ここで言う認知機能とは「匂う」「見る」「聞く」「触れる」「味わう」の5つの要素です。
認知機能が欠如した具体例として、非行少年の多くは「丸いケーキを3等分に切る」という簡単な問題を解くことができないのです。
これは世の中の全てが歪んで見えている可能性があり、物事を正しく認知できていないことを示唆しているわけです。
本当はただ認知昨日が少し劣っているだけなのに、学校の勉強についていけないと「努力が足りない」とか「集中力が足りない」といった理由で片づけられてしまうと、いつまでたってもできるようにならず、結局周りに置いていかれて非行に走るのです。
このような事実をしっかりと受け止め、子供たちの心の声をしっかり聞いてあげる責務が我々大人にはあるわけです。
認知機能が低下する適切な自己評価ができなくなる
認知機能において特に重要なのが「見る」「聞く」です。
人は他人からの目が気になる生き物です。特に思春期の頃なんて周りが気になって仕方がありません。
その中で「見る」「聞く」の機能が欠如していると、自己評価が正しく出来なくなってしまいます。
すると自分のことは棚に上げて他人の欠点ばかり指摘したり、どんなにひどいことを行っても自分は優しい人間だと言い張ったりします。
ではどうしたら自己を適切に把握することができるのでしょうか?
それは集団生活の中で他者と適切にコミュニケーションを取り、相手の反応を見ながら自分にフィードバックするという作業を何度も繰り返すことです。
相手からのサインをしっかり「見る」「聞く」練習をするのです。
この本では少年少女にフォーカスしていますが、大人にも認知機能が低下した人はたくさんいますよね。もはや社会問題、いや、教育の問題かもしれません。
著者が勧める「コグトレ」
教育現場では、漢字が出来なければひたすら漢字の練習をする。計算が出来なければひたすら計算ドリルをやらせるといったように、出来ない原因から目を背けた対応が取られています。
漢字や計算には「写す」「数える」といった土台があり、ここが出来ているかを無視した教育では、子供はどんどん勉強嫌いになってしまいます。
そこで著者が推奨するのが「コグトレ」です。
「コグトレ」とは、認知機能を構成する5つの要素に対応する、「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」の5つのトレーニングからなっています。
詳しくは下記のウェブサイトか、宮口幸治著「コグトレ ーみる・きく・・想像するための認知機能強化トレーニング」を参照ください。
私も二人の息子を持つ父として、今後の教育方針の参考にしたいと思います。
ケーキを切れない非行少年たち ーまとめー
・少年少女が非行に走る裏側には、認知機能の欠如というケースもあった
・認知機能が欠如していると適切な自己評価ができなくなる
・コグトレで勉強の下地を作る
この本を読むまでは私は非行少年少女に対して偏見を持っていました。
非行に限らず、コミュニケーションの基本は他者理解です。
相手に興味を持ち、理解しようとする姿勢が我々には求められています。
自分の価値を相手に押し付けず、まずは人の意見に耳を傾ける姿勢を持たなくてはいけませんね。
そんなことを改めて感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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