【半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防】要約と感想│ビジネス書│自己啓発本│書評│

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当ブログの書評記事では、自己啓発書やビジネス書ばかり紹介しています。

今回紹介するのは「半導体戦争」という書籍で、カテゴリとしては「ノンフィクション→ビジネス・経済」になるかもしれません。いつもと若干ジャンルが異なります。

諸事情あり、半導体の現状と将来について情報収集がしたく、こちらの書籍を読んでみました。

ただし書籍の物理的な厚さが30mm強あり、500ページ近くあるので、かなりのボリュームです。

ぶ厚い!ただ最後は参考文献だけで50ページ近く使われています。

読んでも読んでも前に進まない感じがするので、途中で挫折する可能性がありそうです。

そんなボリューム大の本書について、印象に残った点をかいつまんで紹介していきたいと思います。

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つまりどんな本なのか?

著者はクリス・ミラーというアメリカの経済史家で、アメリカの大学准教授(歴史学)の方です。

半導体の誕生から現在までの変遷、特に国家間の思惑とどう絡んでいたのかが生々しく語られています。

この一冊を読めば半導体が人類にとってどれくらい重要な物なのかが判り、各国の狙いも判ってきます。

逆に半導体の物理の部分(学問としては個体物理)については深くかたられません。

むしろそのような専門図書ではないので、そちらを勉強したければ個体物理の参考書をお求めください。

だからこそ本書は面白いのかもしれません。

半導体は発明当初、どの分野に利用されたのか?

1940年代にアメリカで世界初の半導体が発明され、その後「集積回路」が誕生しました。

しかし当時の集積回路は高額すぎて民生品には到底使われるはずもありませんでした。

誰が集積回路を買ってくれるのかを探した結果、「アメリカ軍」に目を付けました。

旧ソ連が世界初の人工衛星を打ち上げました。これ自体がアメリカの安全保障上大きな懸念となり、のちに「スプートニク・ショック」と言われています。

アメリカも負けじとロケット開発を進めるため、NASAがこの集積回路を初めて注文したそうです。

その後アメリカ海軍がミサイルの性能向上に集積回路を利用しています。

ここを起点に半導体産業はどんどん急成長していくのですが、こうした重要なテクノロジーには国家間の競争がつきものだということですね。

日本の躍進

半導体はアメリカで発明され、集積回路として急速に浸透していきました。

そんな中、ソニーの盛田昭夫さんをきっかけに1980年代の日本の産業がどんどん台頭していくことになります。

盛田昭夫さんはトランジスタラジオを広く普及させた方で、このトランジスタラジオがアメリカにとって脅威となりました。

このあと約10年間は日本がアメリカに対して優位な立場で世界の産業をリードしていきます。

ただ、いつの時代もイノベーションはアメリカで起こることが多いように私は感じます。

1980年代の日本の躍進は、アメリカのイノベーションをきっかけに、日本が品質良く低価格で作り上げたことが要因です。

世界中の優秀な人材がシリコンバレーに集まる理由が少し判った気がします。

TSMCの生まれから学ぶ

かつてアメリカのテキサス・インスツルメンツという半導体開発・製造会社に勤めていた、モリス・チャン、という人が

台湾政府の強力な後ろ盾のもとに1987年に立ち上げました。

もともとは台湾政府がアメリカとの安全保障関係を強化するという狙いがあり、

先端技術を獲得し、半導体サプライ・チェーンのなかに身をおき、雇用を創出するという取り組みを行ってきました。

モリス・チャンの凄いところは先見の明があったことで、「顧客が設計したチップを受託製造する」というビジネスモデルをこの時から考えていたことです。

のちにこのビジネスモデルがファウンドリ(半導体チップの製造を専門に行う企業)という業態として確立され、アップルやエヌヴィディア等の超大手ファブレス企業が育つきっかけの1つになったとも考えることができます。

半導体は設計するだけでも巨額の投資が必要だそうです。製造ともなればさらに巨額の投資が必要になってくるので、ファウンドリとファブレスでお互いがお互いの得意分野にリソースを集中できるのはとても合理的な仕組みだと思います。

何でもかんでも手を出さない、という意味では、「QUITTING」に考えが近いです。

経済史から教訓を学べるので、現代の我々はとても恵まれていますね。

コロナ過の半導体不足の真実

2020年にCOVID-19が大流行し、世界は混乱の渦に巻き込まれました。

当時叫ばれていたのが、「半導体不足」でした。

COVID-19のパンデミックにより都市のロックダウンが起こり、半導体製造工場が閉鎖されたことが原因だと我々一般人は認識していたと思います。

ただ本書に書かれた内容によれば、2021年の世界全体の半導体デバイスの生産量は、1.1兆個以上で過去最高だった。ではなぜ不足したのか?

それはパンデミック以降に半導体注文が大きく変動したからと指摘している。

例えば在宅勤務が増え、インフラを整えるためにPCやディスプレイを新調する人が増えた。

また生活のオンライン化が進むと、データ・センターのサーバーの需要も上昇。

自動車業界は消費者の買い控えを予想し半導体の注文を減らしたが、需要はすぐに回復し、その変化に半導体供給が間に合わなかった。

このように、普段ただニュースを見ているだけでは知り得ないような事実があり、我々は世界の実情を正しく見れていないことが多いです。

それはまさに「FACTFULNESS」そのものです。

まとめ

今回はいつもとは少し毛色の違う書籍を読んでみました。

半導体、集積回路という人類の進歩には欠かせない製品のお話で、そこにはいつの時代も国の安全保障問題が密接に絡んでいることが判りました。

他国に自国の安全が脅かされるから国防に力を入れるのでしょうが、

そもそもなぜ他国を脅かそうとするのか?世界の人々が人類の発展に向けてもっと手を取り合っていければ、大きな問題を解決できそうな気がするのですが。

この辺のことを深掘りしようと思ったら、またそれ系の本を読み始めるしかないですね。

こうして読書がまた読書を呼ぶのかもしれません。

私は世界の平和を願って読書を継続するのみです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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