「組織開発」という言葉をご存じでしょうか?
近年では「コーチング」とか「ファシリテーション」等の言葉がよく聞かれるようになってきましたが、大きなくくりで言えばそれらは「組織開発」なんです。
本書ではそんな「組織開発」の歴史や特徴について、詳しく解説されています。
組織をより良くしたいと考えている人には教科書的な一冊となるでしょう。
理解するのがやや難しい書籍ではありますが、要点を絞って紹介したいと思います。
■著者:中村 和彦 さん
1964年岐阜県生まれ。南山大学人文学部心理人間学科教授、同大学人間関係研究センター長。専門は組織開発、人間関係トレーニング(ラボラトリー方式の体験学習)、グループ・ダイナミックス。アメリカのNTLインスティテュート組織開発サーティフィケート・プログラム修了。組織開発コンサルティングを通して様々な現場の支援に携わるとともに、実践と研究のリンクを目指したアクションリサーチに取り組む。
引用:Amazon
「組織開発」という分野の専門家です。組織開発のコンサルをしながら、日々研究を積み重ねているようです。書籍を出される方は好奇心旺盛で、ある分野の探求心が凄く強いです。
過去紹介した下記の書籍では、「研究」を推奨しています。書籍は研究者にとっての論文みたいな位置づけなのかもしれません。
組織の2つの側面
我々は何らかの「組織」に属しています。会社、学校、サークルなど、色んなタイプがあって、またその中で様々な役割があると思います。
そのような組織を上手くマネジメントしていくには、組織には2つの側面があるということを理解しておいたほうが良いです。
1.ハードな側面 組織構造(部署、部門)、仕事の手順(制度、規則)、理念等
2.ソフトな側面 人に関する要素(意識、モチベーション、コミュニケーション等)
本書ではソフトな側面を、「人間的側面」と表現しています。組織開発においてはこの「人間的側面」のマネジメントへのアプローチが特に重要視されています。
マネジメントする側としてはハードな側面のほうがとっつきやすそうで、ソフトな側面はアプローチが難しく敬遠されそうですね。
組織の6つのマネジメント課題
先ほど組織の2つの側面を紹介しました。組織のマネジメント課題には、その2つの側面の中に6つ存在すると解説されています。
【ハードな側面】
1.目的・戦略 :組織の存在意義、企業理念
2.構造 :組織設計、部署、部門、役割
3.業務の手順・技術 :業務プロセス、どのようなツールを使用するか
4.制度(施策) :評価制度、賃金制度
【ソフトな側面】
5.人(タレント) :個人の能力、リーダーシップ、モチベーション
6.関係性 :協働性、チームワーク、部門内・他部署とのコミュニケーション
このように、ハード・ソフト両側面にマネジメント課題が存在するのですが、多くの企業ではハードな側面ばかりフォーカスされている傾向にあります。
それは恐らくソフトな側面へのアプローチが難しいからだと私は考えています。
企業の人事部や管理職・リーダーは特に本書を基に、組織開発を体系的に学んだほうが良いと思います。
動機付け
毎日活き活きと働くためには、仕事の動機づけが必須です。いわゆるモチベーションです。
ストレスを抱えたまま嫌々働くと、メンタル不調に陥ってしまいます。実際私の周りでそのような状態になった人を何人も見てきました。
ではこのモチベーション(動機づけ)とは何でしょうか?実はモチベーションには2種類に分けることができます。
・外発的動機づけ :報酬や罰などの外的な要因が基になる
・内発的動機づけ :やること自体に動機づけが高まる
給料が上がりやすかった時代は外発的動機づけが容易でしたが、現代は給料が上がりにくいので難しい時代です。
また利益を生み出す直接部門は外発的動機づけがしやすいかもしれませんが、間接部門は企業の業績に直結している感覚が弱いので難しい。
それでも多くの企業は報酬、つまり人事評価を中心としたマネジメントに力を入れがちです。この偏りがもたらす弊害について著者は指摘しています。
内発的動機づけを高めるためには
では一体どうやって内発的動機づけを高めれば良いのでしょうか?それは「仕事の意味が腹落ちすること」です。
誰かにやらされる仕事では人は活き活き働くことができません。表面的には仕事の目的は理解していても、深く腹落ちしている人はほとんどいないのではないでしょうか。
ややもすると腹落ちできる意味は人によって違うと思います。お客様に最高のサービスを提供することだったり、あるいは自己成長だったりするかもしれません。
大事なのは、目の前の仕事や役割に自分なりの意義を見出すことではないでしょうか。同じ仕事をしていても、捉え方次第では多くの学びを得ることができます。
下記の書籍でも内発的動機づけを高めるヒントが多く書かれています。
まとめ
・組織にはハード/ソフト2つの側面がある。
・さらに6つのマネジメント課題がある。
・動機づけには外発的/内発的動機づけの2種類がある。
・仕事の意味を腹落ちさせることで内発的動機づけを高めよう。
今回紹介したのは、組織開発のほんの触りの部分だけです。本書では組織開発の歴史、特に日米の異なる時代背景も詳しく解説しています。
また組織開発を体系的に学ぶことができるので、興味があればぜひ本書を読んでいただくことをお勧めします。
私も労働組合の役員として本書を活用していければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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