町田そのこさんの有名な著書を読んだので少し紹介したいと思います。
基本情報
発売日:2021年3月27日
ページ数:336ページ
出版社:新潮社
著者:町田そのこ
町田そのこさんの著書は以前当ブログで紹介しました。
「ぎょらん」が感動できる作品だったので、別の作品も読んでみたいと思い、今回はこの「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」をチョイスしてみました。
本書の構成
本書は5つの短編小説から成っていて、それぞれの話に主人公が設定されています。
それでいて全ての話は一つの世界の中で繋がっています。
なので、最初に登場した主人公が後の話で脇役?として登場します。
TVドラマだとなかなか無い構成で、色んな人物からの目線で心情の変化が表現される点が小説の良いところかもしれません。
チョコレートグラミーとは
インドネシアに生息する熱帯魚です。
「マウスブルーダー」と呼ばれる魚で、親が口の中で卵を育てます。
このマウスブルーダーという特性が本書の話のキーとなります。
母親のいない晴子という女の子は幼いころから祖母に過保護に育てられてきました。
これがまさにマウスブルーダーと呼ばれるチョコレートグラミーのような関係なのです。
飼育されている熱帯魚はいつまでも環境が変わらない
地元の工場に就職をした唯子は、日々の仕事に特に不満を抱くわけでもないが、ここではないどこかへ飛び出したい衝動に駆られてしまいます。
唯子はまさに水槽の中で飼育されている熱帯魚です。
本人はどこかへ行きたい気持ちがあるのに、様々な事情があって行動に移すことができません。
そのあたりの葛藤ぶりが見どころでしょう。
実際人間には唯子のように自分の居所をコロコロ変えたいと思う人とそうではない人がいますよね。
どちらが正しいという話ではなくて、色々な価値観があるので、理解して肯定してあげるべきですね。
いずれにせよ「飛び出すこと」はメリットも多いです。
個性豊かな登場人物が面白い
この小説には個性豊かな人がたくさん登場します。
暴力的でヤンキーで突然蒸発してしまう彼氏。超絶自分勝手な妊婦。性転換をした飲食店のマスター。妻の不妊が分かったとたん激しいDVを繰り返す身勝手な夫、などなど。
そのため暴力的な描写や性的な描写も多々あります。
その点は「ぎょらん」でも同様でした。これが町田そのこさんのスタイルなのでしょう。
とあるビジネス書にて、小説を読むことは共感力を磨くという主張をしていました。
確かに、登場人物の細かい感情変化や振る舞い等に敏感になれるような気がします。
ただ今回は私的には素直に共感できない人物が多い。
暴力だったり自分勝手な言動は正直理解に苦しみます。
しかし実際問題そのような人もいることは事実で、その背景には辛い経験があるのかもしれない、と考えることはできます。
辛い過去や現実を周囲が受け入れてあげる。そんな優しさを持ちたいですね。
夜空に泳ぐチョコレートグラミー ーまとめー
本作は人間の様々な悩みを丁寧に描いています。
彼ら彼女らの悩みは非現実的であるように見えて、実は現実世界においてもあり得る話なのかもしれないと思わせてくれる内容でした。
我々読者としては、彼ら彼女らが悩みとどう対峙したのか?を見ながら、我々が同じ場面に遭遇したらどう対処する?と考えを巡らせる楽しみがあるでしょう。
小説はTVドラマや映画とは異なり、その辺の人間のドロドロした感情を詳細に表現してくれるので、人間を勉強するのにはもってこいです。
特に町田そのこさんの小説は良い意味でドロドロ系なので、おすすめです!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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