【ルビンの壺が割れた】感想│小説│書評

📚読書

今回紹介するのは「ルビンの壺が割れた」という小説です。

ネタバレをしてはいけないので、本書を読んだ感想を簡単に書いていきたいと思います。

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基本情報

発売日:2017年8月22日

ページ数:156ページ

出版社:新潮社

著者:宿野かほる

本書は宿野かほるさんのデビュー作のようです。

読めばわかると思うのですが、衝撃のラストが話題の一冊です。

ルビンの壺とは何か

そもそも「ルビンの壺」とは一体なんでしょうか。

Wikipediaから引用すると、1951年にデンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した図形とのこと。

向かい合った二人の顔に見えたり、壺に見えたりする絵で、ほとんどの人がおそらく一度は見たことがあるのではないでしょうか。

どんなお話なのか

とある50代の男女の物語です。

学生時代、共に同じ大学の演劇部で活動をしていて、一時は婚約関係にもあったほどの仲でしたが、結婚式当日に彼女が式場に現れず、そのまま30年近い時が経過し、ある日男性の方から彼女宛てにfacebook上でメッセージを送り、そこからメッセージのやりとりが始まるというお話です。

この本はメッセージのやりとりだけで進行していく、「書簡体小説」というジャンルです。

手紙文だけで進行していく小説で、古くからこの形式での小説は存在していたのですが、手紙ではなくfacebookのメッセージという点が現代風です。

喜多川泰さんの「手紙屋」の構成も書簡体小説の要素があるかもしれませんね。

感想

読んだ感想はシンプルに「面白い」です。二人のがやりとりするメッセージしか無いためか、目の前の文字に集中してしまいます。

そして何と言っても目まぐるしく変化する展開が本書の最大の見せ場で、特にラストの展開は全く予想ができませんでした。読み終わった後、完全にあっけにとられました。

本作に込められた著者の想いは直接書かれているわけではないので、結局何が言いたかったのかは分かりません。しかし本作の魅力はそこにあるのだと思います。

読んだ人それぞれの解釈があり、世界観がある。決して一つの考えにハマらない、色々な側面があるからこそ面白いのだと思います。

ルビンの壺は人の横顔に見えたり壺に見えたりする絵です。

壺が割れるということは壺としては見えなくなる、存在しなくなってしまうということ。

つまり、二面性を持った人物がある出来事をきっかけに片方の面でしか見られなくなってしまった、ということを表しているのかなと私は捉えました。まぁこれは若干のネタバレではあります。

展開が急にコロコロ変わっていくので、何が正しいのかよく判らず、読んでいて迷うこともあるかもしれませんが、自分の軸をしっかりと持ちながら読んでほしいです。

「ここは同感だけど、ここは違うのではないか?」などと、自分の価値軸と照らし合わせながら読んでいけば、フィクションではありますが人生経験にもなりますし、思考のトレーニングにもなるでしょう。

ただ内容を楽しむだけでなく、そうした脳トレとしても小説は有益だなと思います。

ルビンの壺が割れた ーまとめー

今回は問題作「ルビンの壺が割れた」の感想を書きました。

所々生々しい描写があったりして、そのような意味でも本作は問題作とみなされているのかもしれません。

ただ一方で、人間の欲がリアルに書かれているため、フィクションでありながらなんとなく現実味も少し感じるところが面白いのかもしれません。

多少の刺激が欲しい人にはお勧めの小説です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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