恐らく誰しもが社名は聞いたことがあるはず「キーエンス」。
若手営業社員の年収が軽く1000万円を超えることで有名ですよね。
今回紹介するのはそんなキーエンス社の仕事の仕組みをかなりオープンにした書籍になります。
著者は日経ビジネスの西岡杏さんという方で、キーエンスの現役社員やOBに取材を行い生の声を聞いてきたそうです。従ってかなりリアル感があります。
謎多きキーエンス社の中身を知ることができるということで、かなり興味深い一冊になっていると思います。
それでは簡単に紹介していきたいと思います。
なぜキーエンスは凄いのか
国内トップクラスの時価総額、高利益率、高賃金。
物価高で苦しむ日本において、なぜこうも飛びぬけているのか?理由は二つあります。
1.仕組み
2.社風
仕組み
本書では様々な仕組みが紹介されています。
今回はその中でいくつかピックアップして紹介します。
ロープレ1000本ノック
営業社員が実際に顧客を訪問する前、社内で営業の練習を行う儀式のことです。
先輩や後輩を顧客に見立て、製品をPRする。
彼らは顧客訪問回数や電話のアポ回数にノルマが課せられており、ただでさえ日々多忙なはずなのに、毎日のようにこの練習を行っているようです。
以前過去記事で紹介した【マーケティングとは組織改革である】では、人間の自己保存の性質について指摘されていました。人は現状維持を好む本能がある、というものです。
本書では「性弱説」と表現していました。
人は弱い生き物であり、油断するしラクをしたがる。だからこそ手を抜かずにやりきってもらいたいというキーエンスならではの想いがあるようです。
自分を成長させたい、という高い志がある人にとっては、うってつけのフィールドかもしれません。
SFA(セールス・フォース・オートメーション)の徹底活用
キーエンス社ではSFAという社内システムを導入しています。
これは営業社員の顧客訪問回数や電話アポの回数、外報という顧客訪問メモ等の情報がデータベースで管理され、社内で共有されるシステムです。
SFAを導入している競合他社は多いとのことですが、キーエンスはこのシステムを徹底的に活用しているそうです。
体育会系の要素があるからこそ、このように統制がキチッと取れるのかもしれません。
組織構成
キーエンスには営業部と製品開発部の間に企画立案部門があります。この企画立案部門が製品開発を主導しているとのこと。
特に意識しているのは、顧客の潜在的ニーズを深掘りすることです。
製品開発部門が製品開発を主導すると、どうしても作り手のエゴが強く反映されてしまいますが、企画立案部門が主導することで付加価値の高い製品を作ることができます。
それがつまり高利益率に繋がっているのだと思います。
このあたりは当ブログでたくさん紹介してきた、日本を代表するマーケター森岡毅さんのマインドにかぶりますね。
キーエンスがバリバリ稼いでいる理由に納得がいきました。
多くの日本企業もこのマインドを見習うべきですね。
社風
キーエンスのもう一つの特徴として「社風」があります。
こちらも印象に残ったポイントのみ紹介したいと思います。
スピード感
顧客のアポ取りから訪問、受注から出荷まで、とにかく何から何まで対応が早いです。
ちなみに私も昔キーエンス社のウェブサイトからカタログをダウンロードしたことがありますが、そのあとすぐに電話がかかってきました。しつこさを感じた点は否めませんが、まさにプロだなと感じました。
このスピードの理由は、代理店を通さず直販スタイルというのもありますが、この即日対応をモットーにしているからであり、このスピードがキーエンス製品の付加価値となります。
会社の収益を従業員に還元する
キーエンス社は、得た利益をなるべく従業員に還元しているようです。
創業者の滝崎さんの昔からの方針が色濃く残っており、それこそが従業員の高年収の源泉になっています。
ただし、なぜそこまで従業員に還元できるのかについては詳しく書かれていませんでした。
世間では内部留保の比率が高い企業が多いですが、キーエンスはどうなのでしょう。
仮に内部留保をほとんどしていなくて、万が一企業が経営のリスクにさらされたとしても、キーエンスの従業員はプロ集団のため、自ら新たなステージを探して食っていけるような気がしました。
単独プレーではなく、チームプレー
これは意外だったのですが、キーエンス社ではチームプレーを意識しています。
個人の営業成績が人事評価対象の全てを占めるわけではなく、プロセスが重視されています。
例えば、自分の担当する顧客以外にもある課題で困っている顧客が他部署にいるという情報を得る。その情報を担当部署に展開する。
自分の利益よりも顧客の利益や会社全体としての利益を重視し、行動する。
そのようなマインドセットが若いうちに身に付くそうです。それは一流のビジネスマンになりますね。
利他の精神を学びたければこの書籍がお勧めです。【GIVE&TAKE】
まとめ
今回は有名企業キーエンスの内部の仕組みに迫った一冊を紹介しました。
表面的には高収益、高収入等の印象が強いですが、他企業がただ真似して従業員の給与を上げられるほど単純な社内構造ではないという事が判りました。
しかしながら、仕組みを完全にやりきる姿勢は他の企業も見習うべきだと感じました。
一企業のプロとしての自覚があり、それ相応の対価が支払われているからこそ、ハードワークにも耐えられるのだと思います。
こうやって手軽に他企業の情報を取得できるという点では、読書は非常に有益です。
もっと早く読書に目覚めていればよかったなとつくづく感じています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント