いまさらながら、池井戸潤さんの小説を初めて読んだので、紹介したいと思います。
基本情報
発売日:2011年11月15日
ページ数:672ページ
出版社:講談社
著者:池井戸潤
池井戸潤さんについてはもはや説明不要でしょう。
この「鉄の骨」は2010年/第31回吉川英治文学新人賞を受賞しています。
私はこれまで読書と言ったらビジネス書だったのですが、小説も読んでみようと思い立ち、どの小説から読もうか?と思った時に、この吉川英治文学新人賞を受賞した小説を中心にチョイスしてみました。
「愛されなくても別に」もそんないきさつで読みました。
何かの賞を受賞した小説を読めば、まずは間違いないかなという浅はかな考えです。
「鉄の骨」のモデル
本作のモデルは、2007年(平成19年)に名古屋市発注の地下鉄延伸工事をめぐって大林組、清水建設、鹿島建設などのゼネコン5社の営業担当が逮捕される談合事件です。
私はゼネコンとは無縁の人生を送ってきたので、恥ずかしながらこの2007年の事件は全く知りませんでした。
もちろん「談合」自体は言葉として知っていたものの、自分の知らないところでこんな事件が起こっていたと思うと、この世界にはまだまだ知らないことがたくさんあって、自分のアンテナは低いなと思わされます。
あらすじ
この「鉄の骨」では中堅ゼネコン一松組の入社三年目の富島平太が談合の実態を知ることになり、様々な葛藤を経験しながら一松組の存続のために必死に駆け回るお話です。
詳細なあらすじはネットでたくさん出回っているので、ぜひググってみてください。
「鉄の骨」はとにかく談合のリアル感というか臨場感が凄まじいです。
NHKでドラマ化されたそうですが、映像では表現できないような細かい描写が小説ならではだと思います。
本作を読み、ゼネコン業界のことをさらに知るために読書の幅を広げていくのも楽しそうです。
なぜ談合に走るのか
ゼネコン業界では同じような工法、材料を使用している限り、似たような原価構造になってしまうため、結局はボリュームディスカウントや人件費削減をしやすい規模の大きな企業が優位に立ってしまうのではと思います。
物語終盤、談合を持ちかけられた一松組は、新工法を発明して大幅なコストダウンを実現します。
本来あるべき姿はこうした技術力を基にした競争でしょう。日本がここまで発展してこれたのは、技術者達の懸命な努力によるものです。そんな初心を忘れてしまった成れの果てが談合なのかもしれません。
本書の中で、個人的に印象に残ったセリフがあります。
「負けたくなければ知恵を絞れ。
それが入札参加者が競争に勝つ唯一の戦略だ。」
カッコいいよね!私はしびれました!これが真のサラリーマンだ!
これこそが本質ではないでしょうか。ゼネコン業界に限らず、あらゆる業界において通ずる考えです。
昨今では急激な物価上昇が起こり、下請け企業の価格転嫁が叫ばれていますが、価格転嫁よりもまずは魅力ある製品作りや、技術革新に目を向けるべきではないでしょうか。
鉄の骨 ―まとめ―
個人的にはほとんど馴染みのないゼネコン業界。そこで実際に繰り広げられた談合をリアルに表現した本作は、読み応えがあってとても面白かったですね。読めば読むほど続きが気になり、ページ数は多いものの、あっという間に読み終わってしまいます。
2007年の談合事件がモデルになっただけで、本作はあくまでフィクションですが、限りなくノンフィクションに近いといっても良いかもしれません。
それだけリアリティがあってのめり込んでしまいますよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント